たちばなかおる『ダウン症児の母親です!』の感想

©たちばなかおる『ダウン症児の母親です!』/講談社
僕には知恵遅れの叔父が一人います。一緒に暮らしていないので、工場で働いているということ以外、詳しいことはほとんど知りません。正確には何という病名で、自治体からどんな支援を受けていて、毎日をどうやって過ごしているか――そういったことは何も知りません。小学生時代に抱いた「おばあちゃん家にはちょっと変なおじちゃんがいる」という認識が今もほとんど変わっていないということだと思います。
24時間テレビやってると思うと憂鬱。障害者を障害者としてしか扱わないことが一番の差別だと思ってるから障害者「特集」なんて本当に勘弁してほしい。日常でダウン症の人に話しかけられたら見えてないかのように無視するくせに、テレビの時だけ「頑張ってて感動しますね」って泣くとか気持ち悪い。
— ホウライマヤ (@allrightHorai) 2017年8月26日
余談ですが、僕は意識的に「障碍」や「障がい」と書かず、「障害」と書いています。字面をソフトにすることはむしろ問題の本質から目をそらすことだと思うからです。調べてみたら、2015年には千葉市長がこんな発言をしていました。
前も言いましたが、「障害者」とは「社会の障害」でも「身体に障害を持つ者」でも無く、「社会との関わりの中で障害に直面している者」という意味であり、私たちはその障害を一つひとつ解消していくことが求められている、と理解しています https://t.co/9hD3uSHx3m
— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) 2015年5月20日
その考えから、私は「障害」を「障がい」と置き換えることには反対です。
「障害」という言葉が引っかかるからこそ、それを社会的に解消しなければならないわけで、表現をソフトにすることは決してバリアフリー社会の実現に資するものではありません— 熊谷俊人(千葉市長) (@kumagai_chiba) 2015年5月20日
僕は千葉市長の考えに全面的に賛成です。
染色体異常による疾患のうち、1番多いのが「ダウン症」であり、600人~700人に1人の割合で出生すると言われています。知的発達の遅れや特有の顔立ち(丸くて起伏の無い顔、つり上がった目、耳が小さい)など、典型的な特徴をもち合わせています。難聴や視覚障害(遠視や乱視)を併発する等合併症を持つことも多く、小さいころは風邪を引きやすかったり心臓にトラブルが起こったりといったように、体が弱い子どももいます。ただし個人差が激しく、このように重い合併症にかかる子どももいれば、ほとんど合併症が無い子どももいます。成長すると共に身体は強くなっていくことが多いです。
ダウン症候群によく見られる行動リスト意思を上手に伝えることができない思っていることを言葉で上手く表現できない。発音が不明瞭で聞き取ることができない。理解が遅い集団への一斉の指示では理解することができない。自己中心的な情緒傾向頑固で自己中心的。集中力や持続量が無く、すぐに飽きてしまう。運動能力が低い疲れやすい。筋力も弱く、体力そのものがあまり無い。上手く交友関係を築けない友だちよりも大人(教師など)との関わりを強く求め、交友関係を広げることが苦手。何でも口に入れてしまう紙やスポンジなど、何でもすぐに口に入れてしまい食べてしまう。※リストはダウン症候群の子どもに一般的にみられる行動の一例です。
子どもの障害自体はもちろんマイナス事項なんですが、そこをサポートしてくださる方々からいただく笑顔や誠実さ、そして自分なりに最大限持ち続けている感謝の気持ち。それらが絡み合ってできている今の日常は、決して不幸なものではありません。むしろ「いい感じ」だと思っています。だからといってもちろん、障害児のいる暮らしが障害児のいない暮らしよりも上質だとか、精神的に豊かだとか、ひいては「日々感謝の生活サイコー! 障害児がいても全然オッケー! 出生前診断で陽性だった人も生んだほうがいいですよ!」とアピールしたいわけではありません。©たちばなかおる『ダウン症児の母親です!』p.103/講談社

ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません