寄生獣
©岩明均『寄生獣』p.69/発行所=講談社

タイトルはホラーとか猟奇物っぽく見えるかもしれません。実際、恐ろしい絵やスプラッタなシーンも出てきますが、ジャンルとしてはバトル漫画だと思います。
ある日、謎の寄生生物が地球上のあちこちに降臨して、人間の“脳”に寄生します。寄生生物は「地球に有害、かつ数が増え過ぎた人類を減らす」という本能を持っているらしく、寄生された人間は元の人格を失って人喰いの化け物になります。ところが主人公を狙った個体は“脳”でなく“右手”に寄生してしまったため、主人公の人格は失われず、二人(?)の共同生活が始まる――というお話です。

ファンタジー要素は「寄生生物が現れた」という一点にほぼ限られ、「現実にこんな寄生生物が現れたらどうなるか」という考え方で(たぶん)構築されています。キャラごとに性格や境遇の違いはあっても「固有の特殊能力」みたいなものはありません。物理攻撃限定です。よって、いわゆる異能バトルというよりは空想科学バトルと呼んだほうがふさわしい気がします。

人間社会について学習した寄生生物がどんな行動に出るか、一方で人間がどんな対策を打つか――という推移が大変な説得力をもって描かれています。「本当にこうなりそう」と読者に信じさせる力があります。寄生生物の成長に伴って物語のスケールも大きくなっていきますが、バトル漫画にありがちなハイパーインフレは起こらず、ちょうどいいところで綺麗に終わります。(漫画文庫で全8巻)



何よりの見どころは、主人公に寄生した「ミギー」の魅力です。ミギーは主人公からエネルギーの供給を受けているため、「人間を食べたい」という本能が封じられています。それでも性格は基本的に冷酷なのですが、好奇心が旺盛で、時おり冗談のようなことを言ったりもします。非常に合理的かつ柔軟な考え方をしていて、主人公と意見が分かれた時も決して感情的にならず、最適な妥協点を見つけ出そうとします。絵だけ見ると気持ち悪いかもしれませんが、中身を知ると最高のヒーローです。

もう一つ、この作品の優れているところは、「地球にとって有害な種である人間は今後どうあるべきか」という設問に、きちんと答えを出している点です。投げかけて考えさせるだけでなく、かなりハッキリとした結論を導き出しています。メッセージ性がエンターテインメント性の一部として吸収されがちな――読者はその場では考えるけど翌日には忘れている――昨今、真摯に問題と向き合っている『寄生獣』は極めて貴重な作品と言えます。




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