資本論
装画・挿画=平田利之/装丁=坂川栄治+田中久子(坂川事務所)/発売元=集英社

いきなり別の本の話ですが、椎名誠さんが中国やロシアへ行った時の旅行記をいくつか読んでみると、「社会主義ってつくづく無理があるよなあ」と思わされます。加えて、高田かやさんの『カルト村で生まれました。』というエッセイを読むと、「こんな小規模でこの有り様(村の人たちの多くはそう思っていないでしょうが)じゃやっぱり絶対無理だなあ」となります。テレビで垣間見える北朝鮮の現状もひどいものですよね。戦時中みたいに「アカ」呼ばわりする気はありませんし、資本主義が完全な正義だと思っているわけでもありませんが、僕にとって社会主義・共産主義の共同体は「目指してほしくないもの」というのが本音です。

大雑把に言って、大多数の日本人がそんな感じなのではないでしょうか。でなければ共産党はもうちょっと議席を取れるはずです。

そして、「マルクス主義」or「マルキシズム」=「資本主義を打倒して社会主義の国家を樹立せよという考え方」だと認識して毛嫌いしている日本人も結構多いんじゃないでしょうか。僕は表題の『高校生からわかる「資本論」』を読むまでずっと誤解していました。下手をすれば死ぬまで誤解しっぱなしだったかもしれません。
本書を読むと、マルクスは『資本論』の中では決して「命令」も「扇動」もしていない、ということがよくわかります。「資本主義は○○のように育っていき、○○のような良いところもあるが、○○のため最終的には破綻するであろう」と論理的に「指摘」あるいは「予測」しているだけで、「資本家を撃破せよ!」とは言っていないのです。ところが、どうやら『資本論』に影響された一部のインテリが焦って撃破してしまったのがロシア革命であり、そのインテリに感化された人たちが『資本論』=撃破論だとすり替えてしまったようです。



マルクスは資本主義が発達して破綻するまでの流れを実にうまく説明しています――ということを、池上さんはとてもうまく説明してくれています。軒下でつららがだんだん大きくなっていって自重で落ちるさまを観察した日記みたいに、あるいは一匹の生物が生まれてから死ぬまでを追ったドキュメンタリー映画みたいに、マルクスは「資本」というものがどんな過程をたどるか、丹念に解説しています。

どうして『資本論』がしばしば誤解されているのかと言うと、ロシア革命の影響もあったでしょうし、それ以上に「難しさ」のせいではないかと思われます。『資本論』の原文は非常に持って回ったムズカしい言い回しばっかりです。たとえるなら、中二病全開のライトノベルの「呪文の詠唱」部分のテイストで「全文」が書かれているようなものです。微笑ましいことに、池上さんは「なんでそんなわかりにくく言うねん」といちいちツッコミを入れています。原文を読破した人がほとんどいないせいで、簡単に誤解されてしまうのでしょう。



池上さんは、どんな話をする時もそうですが、常に「中立」です。本書の中でも、資本主義と社会主義、どちらか一方を悪者にせず、「皆さんが自分で考えてくださいね」というスタンスを守っています。中立と見せかけてこっそり(時にはあからさまに)印象操作をする人も多い中で、池上さんは数少ない本物のジャーナリストだと思います。




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